『精神論ぬきの電力入門』(新潮新書)澤昭裕

『精神論ぬきの電力入門』(新潮新書)澤昭裕

原発の維持・撤廃にかかわらず、原子力関連の人材と技術は、今後何十年にもわたって維持し確保していかなくてはなりません。
p118

たとえ今すぐ原発を停止させても、当面は発電所や原子炉は存在し続け、使用済燃料も残ったままです。
不測の事態が起きないような充分なメンテナンスは欠かすことができません。
福島第一原発の事故処理はもちろん、他の原子炉を含めた廃炉処理にも高い技術と人材が不可欠です。

使用済燃料の処理費用を含めると維持費は高くつくだろうが、どうのような技術もすべてを形式知化することはできず、実践の中でしか学ぶことのできない暗黙知の部分は残ってしまうので、技術を継承できる水準での稼働は必要なのかもしれない。
使用済み核燃料プールが満杯にならないように状況を鑑みながら、リスクを内包しながらも原発という選択肢を将来世代に残すべきかもしれないと思い悩んでしまう。
最初からこんな厄介なものに手を出さなければよかったとも思うが、すでに手を出してしまい、産油国でも原発が稼働する世界になってしまったので、一国平和主義が幻想なら一国脱原発主義も現実的ではないのかもしれない。しかし地殻の活動が盛んな日本には地層処理できる場所はなく、バックエンドの費用は膨大なものとならざるをえないだろう。なにせプルトニウム239の半減期は24000年だ。
気象庁 | 地震発生のしくみ

石炭火力発電に対して、石炭は資源量が豊富で調達先が分散し安定していて安価だが、硫黄酸化物、窒素酸化物を排出するので「汚い」という印象があった。しかし、なんと日本の火力発電所は世界最高水準の環境性能を誇るという。

日本の石炭火力発電所が大都市と近接できるのも、排煙中の硫黄酸化物、窒素酸化物、煤煙などの大気汚染物質を、周辺環境に全く影響がないレベルまで除去する技術があるからです。

発電効率が高い石炭ガス化複合発電(IGCC=Integrated coal Gasification Combined Cycle)という技術もあり、通常38%が45-50%まで向上する。
さらには発生する水素も利用するIGFC(Integrated coal Gasification Fuel cell Combined Cycle:石炭ガス化燃料電池複合発電)というのもあるようだ。
環境大国ドイツやデンマークでも石炭火力発電で50%近く発電しているというから、ベースロード電源としてもっと石炭火力発電に注目すべきだろう。
日本では北海道電力中国電力沖縄電力北陸電力などでは石炭が主力になっているらしい。
いつぞやオーストラリアから褐炭から水素を取り出して輸送するという話も耳にしたが、卵は様々なカゴに入れておいた方が良い。

ちょっと、中国電力のウェブページを覗いてみた。
https://www.energia.co.jp/energy/general/thermal/thermal5.html

「熱効率が1%向上すると年間18万キロリットルの燃料(重油換算)が節約でき,約55万トンのCOCO2排出量が削減できます」
と書いてあった。"COCO2"は誤植だろうが、COCO壱番屋を連想してしまった。

https://www.ichibanya.co.jp/index.html

CoCo壱番屋のカレー

JERA、発電所をDX 石炭火力コスト500億円減: 日本経済新聞

地球環境産業技術研究機構
資源エネルギー庁 電源開発の概要
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2020html/2-1-4.html

Integrated coal Gasification Combined Cycle
IGCC 石炭ガス化複合発電
100万kW級 4400億円(35%程割高)