『原発はやっぱり割に合わない』(大島堅一)も読んでみよう!なぜ、【再処理】依存症になってしまったのか?

原子力発電は最も高い電源

原子力発電は事故を起こさなくても「最も高い電源」らしい。

p106

原子力は、政策費用を含めれば、最も高い電源です。

p107
表4-1 電源別の政策費用

研究開発費用 立地対策費用 合計
原子力 1.46 0.26 1.72
火力 0.01 0.03 0.04
一般水力 0.04 0.01 0.05

図4-1「本当の発電コスト」から表に

原子力 10.25
火力 9.91
一般水力 3.91

それにしても揚水を除いた一般水力は安いなあ。
まあ、燃料費がかからないからだろうが、地熱と同じで場所が限られてしまうので他の電源は必要となる。

意義を失った再処理

高速中性子を使用する増殖炉。
増殖が高速なのではなく、中性子が高速なのだから、「高速中性子炉」というネーミングのほうが誤解を招かないような気もするのだが、まあ、それは置いておいて、
高速増殖炉は燃料としてプルトニウムを使用する。
再処理では、そのプルトニウムを抽出する。
すなわち、高速増殖炉と再処理は両方をセットで完成させなければ意味がない。
そして、「もんじゅ」は廃炉と決まった。
しかし、再処理の計画は従来通りのままのようだ。
「もんじゅ」廃炉計画と「核燃料サイクル」のこれから|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

なぜ経済性のない再処理を進めようとするのだろうか?

再処理に経済性がないことは、
『原発のコスト』(大島堅一)を原発「安全神話」の立場から読んでみよう! - willwealth’s diary
で紹介した。
では、8兆円のランニングコストをかけて1兆円の製品を作る再処理事業なんて、いったい何故、進めようとするのだろうか?

本書の160ページで明快に答えてくれている。

再処理工場が止まってしまったらどうなるでしょうか?
六ケ所再処理工場がある青森県は、再処理するという目的があるということを前提に、中間貯蔵(仮置き)しておくことを認めてきました。
再処理工場が止まってしまえば、再処理のための貯蔵という名目がなくなります。
そうなると、使用済燃料を引き受けてもらえなくなってしまいます。

その結果、使用済燃料の送り先がなくなってしまいます。
使用済燃料を置くところがどこにもなくなってしまいますから、原発の敷地内に置くしかありません。

まさに「トイレなきマンション」の状況に陥ってしまうようだ。

【ご参考】
(1)「六ケ所村の核燃再処理」国策はなぜ転換できない
「六ケ所村の核燃再処理」国策はなぜ転換できない | 経済プレミア・トピックス | 川口雅浩 | 毎日新聞「経済プレミア」
(2)破綻の「核燃サイクル」電力会社がやめられない理由
破綻の「核燃サイクル」電力会社がやめられない理由 | 経済プレミア・トピックス | 川口雅浩 | 毎日新聞「経済プレミア」

すでに電気料金から徴収されている!

私は知らなかったが、「電源開発促進税法」に基づいて、再処理のための積立金は電気料金から徴収されているという。
原発を持つ電力会社が損害賠償費用を捻出するための「負担金」も電力料金から徴収されているらしい。
しかし、バックエンドの費用はこんなものでは済まないだろう。

将来世代にツケを回してよいものだろうか?

今、将来世代に、「使用済燃料の処理費用」という莫大なツケを回し続けている。
将来に禍根を残すようなエネルギー政策は転換すべきだと思うが、「原子力村」と呼ばれる利益集団は経済的にも政治的にも非常に強力なので、
政治の世界から既に退いている人々は別として、現役の政治家では「原子力村」に抗うことは政治生命を危険に晒すことになるので難しいのかもしれない。
中には例外的に異を唱える現役政治家もいるようだが、きっと、選挙区市民からの支持なのか何なのか、強い政治的基盤をもっているのだろう。

私自身は、もし将来の世代から「あのとき、あなたは何をしたのか」と問われたら、「傍観していました。」としか答えられない。
所詮、一般市民です。

本書は、著者が一般市民向けの講演を再構成したものなので、「厳密な論証はすべて省略」されているゆえなのか、
講演で一般市民からの質問に答えた経験が生きているのか、『原発のコスト』よりはとっつきやすいと感じた。
どちらかといえば、この『原発はやっぱり割に合わない』から読むのをお勧めするだろうなあ。

※著者は、「原子力“村”」と呼ぶには、非常にパワフルなので「原子力複合体」という言葉を使っている。
確かに、「村」という表現だと「ペンギン村」のような牧歌的な印象を伴ってしまい、「ウホホーイ」という声が聞こえてきそうだ。