『AI新世 人工知能と人類の行方』小林良太、篠本滋、甘利俊一(監修)

AIはどのように活用されているのだろうか?

AIの理論や最前線よりは、今、どのような活用されているのかというという点に関心があって「現代人必読の書」を繙いてみた。
機械学習については今まで目的やどのような応用対象に目をつけるのかが難しいと感じていた。画像や動画を生成して娯楽に応用する例は確かに高い技術を示していて面白いとは感じるが、「確かにスゴイけど、だから何?」という疑問も生じてしまう。本書では農業や製造業に応用する例が多く紹介されていて興味深かった。

私は知らなかったが「人新世」という言葉になぞらえて本書のタイトル「AI新世」となっているとのこと。

人新世(ひとしんせ)
人類が地球の地質や生態系に与えた影響に注目して提案されている、地質時代における現代を含む区分。
AI新世
AIが人間社会を左右するほどの影響を及ぼす時代(が来るかもしれない)。

本書の構成

本書は3部構成になっている。

第1部
AIにできること
第2部
AIは社会をどう変えるか
第3部
AIの歴史と未来

産業への応用は第2部で紹介されており、以下は主に第2部に関するメモである。

ロボットトラクター

クボタではロボットトラクターをモニター販売を始めているが、価格が1100万円ほどで一般の農家では手が出ない。なので、コストダウンが課題となっているが、技術的にはレベル2に到達しているというのでスゴイ!。「安いニッポン」からなら輸出も期待できるかもしれないが、クルマでも所有ではない方向にシフトしているので、Robotics as a Service (RaaS 造語)も検討してくれたなら・・・。と思ったら、Retail as a ServiceやらRansomeware as a Serviceなどというのがあるようだ。
special.nikkeibp.co.jp

除草ロボット

農業労働の30%を占める除草を行うロボットの開発も進んでいる。
smartagri.jp

www.wadosng.jp

収穫ロボット

農業労働の20%を占める収穫を行うロボット
https://smartagri-jp.com/smartagri/834/
ヤマハデンソーなどの大手の他、ベンチャー企業もアスパラガス、イチゴ、キュウリ、ナス、ピーマンなど収穫対象とするロボットの開発を進めていた。
※日本最大の農業展示会「第9回農業Week」
ブドウの収穫は難度が高いらしいのだが、ヤマハ発動機が挑戦しているではないか。
www.drone.jp

小規模な手作りAIによる解決
www.itmedia.co.jp

AI導入のデメリット

好むと好まざるとを問わず今後、AIは徐々に社会の隅々まで浸透していくであろうが、注意しなければならない点が挙げられていた。

  • AIを過信せず、暗黙知が失われないように優れた技術者を正しく評価すること。
  • 現場の働き甲斐が失われる虞(おそれ)
  • 導入コスト
導入コストの高いAIには頼らず、現場の知恵を活かす

パナソニック新潟工場の現場を変えた4人の高度な技術を使わない「からくり改善」
YouTubeあり(ただ、現場の作業を知らない私には理解できなかった)。
monoist.itmedia.co.jp

農業のような分野では、工夫だけでは太刀打ちできず“ロボット+AI”が必要になってくるのかもしれないが、「からくり改善」の話を読むと製造業ではQC活動やカイゼンなどの創意工夫で課題を解決できる領域がまだまだあるような気がしてくる。何もかもAIで解決しようとして牛刀で鶏を切るようなことをする必要はないのかもしれない。

あまり呑気なことを言っていると足をすくわれるような気がしないでもないが、程よい予算で、経験のない人よりは、そこそこうまくやってくれて人の負担を減らしてくれればそれでよいのではないかという気がしてくる。