『シルバー民主主義』八代尚宏 ー 高齢者優遇をどう克服するか

日本の人口ピラミッドは正に逆ピラミッドになりつつある。
https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2022.asp?fname=G02-01-2.png
この年齢構成で賦課方式の年金を維持するのは無理筋であろう。

公的年金の受給権は、国に対する債権であるが、その実態は裏付けとなる資産を欠く不良債権と化している。
今、必要な改革は、社会保障費の構成を、肥大化する社会保障給付支出の抑制と、真に支援を必要としている低所得層への直接的な移転に重点を置く「所得分配の効率化」である。
後の世代からの所得移転を抑制し、最も所得格差の大きな高齢者層内部の所得分配を強化することが、社会保障改革の究極の課題である。

年金支給開始年齢の引き上げは必要である。
ドイツでは、シュレーダー政権が、年金支給開始年齢の68歳への引き上げや公共職業安定所の改革などの持続的な社会保障支出の抑制に結び付く内容の改革を実施した。
左派の政権が進めた改革であったので、保守である野党からも協力を得られ円滑に進められた。
2005年の選挙で敗退してしまったが、構造改革の成果は右派のメルケル政権に継承され、ドイツ経済が欧州でもっとも高い経済パーフォーマンスを示す基礎を築いたのである。
オーストラリアでは既に年金支給開始年齢を70歳への引き上げること決めている。

国債に依存した社会保障からの脱却」
https://www.nira.or.jp/pdf/1204report.pdf
3ページの「図表1 社会保障収支の推移」

国立社会保障・人口問題研究所
国立社会保障・人口問題研究所(2015),財務省
給付費は毎年、8000億円程度増える。

市場の規律により突然、社会保障給付の大幅な削減が強制される「ハードランディング・シナリオ」を回避するためには早急に対策を打つ必要があるが、シルバー民主主義の日本で実現できるかどうかに関しては疑問である。

なぜなら厚生労働省の通称「年金マンガ」によると問題はないという立場を取っているからだ。
いっしょに検証!公的年金 | 厚生労働省
本当に大丈夫なのだろうか?