『未来を生きるスキル』(角川新書)鈴木謙介

『未来を生きるスキル』(角川新書)鈴木謙介
著書の中でリクルートワークス研究所の調査データを紹介して、現状分析している箇所がうまい表現で分節化されていて興味を引いたので、ほぼ引用だけだがメモしておく。

生涯学習の呼び声を聞いてから久しいという印象があるが、企業の側でも産業構造の転換を睨んで「学び続ける」ことを社員に要求するようになっているという。
しかし、自発的な学びの経験のある人は、全体の12.6%で、51%の社会人は「学んでいない」という調査結果だったらしい。

著者の背景分析は以下の通り。

ひとつには日本全体の産業構造が、急激な変化のない業種に偏っていることが考えられます。要するに、日々の業務が同じことの繰り返しであり、その繰り返しのなかに多少の変化はあるものの、基本的には仕事の中身自体はあまり変わらない構造のなかで生きている人が多いということです。
そんな状況であれば、あえて自分の時間と労力を割いてまで勉強する必要もないと考えるのは不思議ではありませんよね。先の調査では、医療・福祉や金融、情報通信といった変化の早い業界では、勉強している人の割合が相対的に多いことがこの分析を裏付けています。たとえば、プログラマーなどの仕事は、日々勉強しなければ技術の変化に置いていかれるため、自己投資の活動が比較的に活発になるわけです。

情報通信の分野でも主体的に学んでいる人がどの程度、相対的に多いのか疑問に感じた。過労死すれすれの忙しさで、自分の時間を割いてまで勉強する気力はなくOJTに委ねる人がほとんどなのではないだろうか?

まあ、このあたりは凡庸な表現であるが、多くの業務を経験してあまり角を立てずに世渡りしていくような「人柄」が重視されてきた述べ、以下のように要約する。

要するに、わざわざ自己投資をして「勉強して成長する」よりも、「組織への情緒的な適応を進める」ことこそが、個人がサヴァイヴするための合理的な戦略だったわけです。

私自身は自己投資をせず、かつ、合理的な戦略も取ることができなかった部類だが、これからはジョブ型雇用が増えそうな兆候もあり、学びの姿勢が問われることになるのであろう。著者の提唱する協働のアプローチを否定するつもりはないが、まずは、生き残ることが動機でよいから自己投資をする習慣を身につけることが先決だと思う。
尤も、自己投資しても何処に配置されるかわからず、FAなどの制度を導入していても応募できる人材は超優秀な人だけという状況では、何もせず運を天に任せるのも合理的な戦略なような気もする。

リクルートワークス研究所の調査での自己投資の定義は「仕事に関わる知識や技術の向上のための取り組み」だそうです。