『”悪夢の超特急” リニア中央新幹線』 樫田秀樹

電力融通のニュースに触発されて樫田秀樹(著)『”悪夢の超特急” リニア中央新幹線』を再び読んでみた。
なぜかというと以前、本書を読んだときは、「リニア新幹線は大量の電気を必要とする」という記憶というか印象を抱いたからだ。だが、その後、リニアのことはすっかり忘却し無関心層の身になっていたが、再読してみて問題の中心は違うところにあるのではと思うようになった。

  • 新幹線の3倍以上の電力を必要とする。
  • 水涸れの問題
  • 残土の問題
  • ウラン鉱床を回避できるかは未知

経済的に見合わないのであれば運転を中止し事業から撤退すれば電力の問題は解決する。しかし生態系に影響を与えてしまった場合には復元することはできない。なにか原発と同じ感じで、事故を起こさなくても不可逆的な結果をもたらす可能性の高い事業をそこまでリスクを冒してまで挑戦する必要があるのだろうか?東京・大阪間では乗り換えが必要でトータルでは20分程度早いだけで、わざわざ乗り換えるくらいなら最初から新幹線を利用するという声は多い。リニアが運ぶのは人であり、コロナ禍でテレワークが普及した今日的文脈の中では滑稽ですらあるが、次世代へ日本国土をどう残していくのかという視点からは原発と同じく狂気の沙汰としか思えない。

あとで知ったのだが、2017年に同じ著者により岩波から『リニア新幹線が不可能な7つの理由』が発行されていた。
こちらは63ページの岩波ブックレットなので、とっつき易いかもしれない。
7つの難問として以下のものを列挙している。

  1. 膨大な残土
  2. 水涸れ
  3. 住民立ち退き
  4. 乗客の安全確保
  5. ウラン鉱床
  6. ずさんなアセスと、住民の反対運動
  7. 難工事と採算性

「我々は一時的な管理人で後世にどんな国土を残すのか」という観点から当事者でないからとれる態度ではあるものの私は敢えて現在の世代の犠牲には目をつぶることにする。
しかし、水涸れと膨大な残土の問題は今の世代で終わりとはならない。まして、リニア新幹線のルートになっている岐阜県東濃地区には日本最大級のウラン鉱床が点在するという。となれば、「膨大な残土」には膨大なウラン残土が含まれる「人形峠ウラン公害」の過ちを繰り返す危険性は大きいと想定するのが妥当である。それも大規模に。
リニア新幹線には原発と同じ構図があるという。

亡国に至るを知らざれば、これ即ち亡国の儀