『原発のコスト』(大島堅一)を原発「安全神話」の立場から読んでみよう!
「安全神話」の立場から「原発のコスト」について本書に依拠して考えようとしてみたことをメモしておこう。
前提
バックエンドコスト
そして、残るはバックエンドコストだ。
バックエンドコストとは
バックエンドコストとは、核燃料を使用した後に残る使用済燃料の処理・処分コストである。
使用済燃料の中には、核分裂連鎖反応によって生じた様々な放射性物質が含まれている。
放射性物質の放射能が弱まる期間は種類によって大きく異なってくる。
短期間のうちになくなってしまう物質もあるが、プルトニウム239のように、半減期が24000年に及ぶものもある。
その間、放射能を出し続けるため、人や環境に悪い影響がでないよう、安全かつ厳重に管理される必要がある。
2つの処理方法
処理方法には2つある。
- ワンスルー方式
- 使用済燃料を直接処分する方法
- 核燃料サイクル方式
- 使用済燃料を再処理し、プルトニウムを取り出すという方法。プルトニウムを取り出して、使用済燃料をもう一度利用する。原子力発電で使い終えた燃料から核分裂していないウランや新たに生まれたプルトニウムなどをエネルギー資源として回収し、再び原子力発電の燃料に使うしくみ。
再処理工程からは、高レベル放射性廃液とTRU(超ウラン元素)廃棄物が発生する。
高レベル放射性廃液は、強い放射能を帯びた液状の廃棄物で、このままでは扱いが難しいので、ガラスに混ぜて固化体にする。
できあがった廃棄物をガラス固化体という。
その放射線量は、固化体ができた直後は毎時14000シーベルトで、近くに人間がいれば瞬時に致死量を超える被爆をするほどである。
また半減期が一万年を超える放射性物質も含まれている。
例えばネプツニウム237は半減期約214万年、ジルコニウム93は半減期約153万年である。
TRU廃棄物は、高レベル放射性廃液ほど強い放射線を出さないが、非常に長い間放射線を出し続ける放射性物質が含まれている。
再処理をすると何か処理できないとんでもないモンスターが出てきてしまう気がする。
「毎時14000シーベルト」とか「半減期約214万年」とか「半減期約153万年」とか、「冗談でしょ!」と言いたくなる。
再処理のコスト、ランニングコストだけで
コストの方はどうだろう?
p118の「表3-2 政府によるバックエンド事業の費用推計」から1兆円を超えるものをピックアップして、単位は兆円とした。これくらい、大雑把なほうがよい。
再処理 | 11.0 |
高レベル放射性廃棄物処分 | 2.6 |
使用済燃料燃料中間貯蔵 | 1.0 |
MOX燃料加工 | 1.2 |
出所は、
『総合資源エネルギー調査会電気事業分科会 コスト等検討小委員会
「バックエンド事業全般にわたるコスト構造,原子力発電の収益性等の分析・評価」2004年1月23日』
である。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/gijyutu2004/gijyutu03/ssiryo2.pdf
この資料の9ページに
これによって代替されるウラン燃料は約4300tUとなり、その取得費用は9千億円程度と見込まれる。
とある。
9千億円程度のウラン燃料を節約することができるのである。
まあ、ざっくり1兆円としよう。
再処理費用の11兆円の中には減価償却費が含まれているので、これを除いて「操業(本体)」だけ考慮して7兆円としよう。ランニングコストだけを見てみたい。
8ページに再処理事業費11兆円のうち約36%が減価償却費と書いてある。また、33ページの表でも「操業(本体)」は約7兆円となっている。
MOX燃料加工費用は1兆円に丸めてしまえ!
以上より、約8兆の操業費用をかけて1兆円の製品を作る事業を行うことになる。
「冗談でしょ!」と言いたくなる。
既に稼働していると思いきや、まだ完成していなかったようだ。
東京新聞の記事より。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/153868
白紙に戻すのは、「今でしょ!」と言いたくなる。
「使用済燃料燃料中間貯蔵」が1兆円かかるので、「ワンスルー方式」でもこのコストは避けることはできない。
地層処理は「冗談でしょ!」
そして、気象庁の「地震発生のしくみ」の「地震の起こる場所」を見てみると、日本列島全体が真っ赤だ。
気象庁 | 地震発生のしくみ
こんな真っ赤な場所で地層処理をするなんて、「冗談でしょ!」と言いたくなる。
地層処理が無理なら永久に「中間貯蔵」せざるを得ない。
その費用はいったい誰が払うのだろうか?
「私でしょ!」とは言いたくない。
※書いているうちに、おちゃらけになってしまった。「大島先生に失礼だろ!」という声が・・・。
はい、乞寛恕。